「顧客単価を上げたいけれど、どうすればいい?」
「アップセル施策を実施したいけれど、どのような方法がある?」
アップセルとは、ユーザーにより上位の商品を買ってもらうための取り組みです。
価格が高い上位の商品を購入してもらうことで顧客単価が向上し、収益を上げることができます。
アップセルの施策には、以下のような手法があります。
それぞれの施策はアップセルを提案するタイミングが異なるため、ユーザーのニーズを把握して適切な方法で提案することが重要です。
この記事では、以下の内容を詳しく解説しています。
- アップセルの施策9選
- 実施するアップセル施策の決め方
この記事を読むことで、アップセルの提案方法にはどんなものがあるのかがわかります。自社でどのようなアップセル施策に取り組むべきか決める方法も解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
1.アップセルの施策9選
アップセルを提案するための施策は、主に以下のようなものがあります。
施策ごとにアップセルを提案するタイミングが異なります。
では、それぞれどのようにアップセルを行うのか詳しく解説していきます。
1-1.無料会員・トライアルからのアップセル
無料会員やトライアルは、すぐに売上に貢献するものではありません。しかし、実際に商品やサービスを体験してもらうことで、
- 商品を購入
- 有料会員にアップグレード
このようなアップセルに繋げることが可能です。
1-1-1.無料会員や体験版から有償版へのアップセル
PCツールなどの無料会員や体験版から有償版への引き上げタイミングはツールの利用中です。
無料会員や体験版の場合、機能が制限されているケースが多くあります。その場合、制限の上限に達しそうなユーザーに対し、有料会員や有償版へのアップグレードをおすすめするポップアップやお知らせを表示させると効果的です。
オンラインストレージサービスの「Dropbox」は、2GBまで無料で利用できるプランを用意しています。制限に達しそうなタイミングで有料プランへのアップグレードを勧めるポップアップを表示し、無料会員では物足りないと感じるユーザーをアップセルに誘導しています。
1-1-2.無料期間があるサービスから有料会員や商品購入へのアップセル
無料期間内は制限なくサービスを試すことができるものもあります。このような場合は、無料期間の終了時に有料会員登録やツールなど製品購入を促すメール配信や、ポップアップで無料期間が終了することをユーザーに知らせるなどしましょう。
これらの施策は、商品購入や有料会員になることがいかにユーザーにとって有益かを伝えることが大切です。
ただ有料会員や定期購入を進めるだけでなく、どのようなことができるようになるのか、どのような効果が期待できるのかといった訴求を忘れずに行いましょう。
1-2.DMやメールでアップセル提案
お試しから定期購入に繋げたい場合、DMやメールでアップセルを実施しましょう。
このような場合、以下のようなタイミングでユーザーにコミュニケーションをとります。
タイミング | 具体的な施策例 |
---|---|
お試し商品の発送 | トライアル商品と共に定期購入の案内やお客様の声、ブランドブックなどを同梱 |
お試し商品到着から一定期間内 | ユーザーがトライアル商品を受け取ると予想される日から、数日おきにメールやLINE配信で定期購入の案内1か月経過しても定期購入の申し込みがなければ、割引率をアップする |
メール配信を行う際に、毎回定期購入を促す内容ばかりではユーザーが拒否反応を示す可能性があります。そのようなリスクを減らすためにも定期購入に関することを毎回配信するのではなく、商品の使い方や魅力、利用者の声だけを伝えるメールも配信するのがおすすめです。
そうすることで、ユーザーに商品のことをより深く知ってもらうこともでき、より興味を持ってもらえるでしょう。
この手法は、ライオンやサントリーウエルネスをはじめ、定期購入商品を扱う多くの企業で実施されています。
1-3.決済ページにアップセル商品を表示
決済ページにアップセル商品を表示すれば、決済直前のユーザーに対して「もっといい商品がある」と示すことができます。
ユーザーの中には上位商品との比較検討をしていなかったり、上位商品に気づいていない人もいるでしょう。そのようなユーザーに上位商品を表示させることで、ユーザーの選択肢も広げることが可能です。
また、上位商品と悩んで板ユーザーに対しても、最後の一押しでおすすめすることで「やはり性能がいいものを購入しよう」と気持ちが変わるかもしれません。
表示の仕方としては、決済ページを開いた際にユーザーの目に必ず止まるように、ポップアップ表示させるのがおすすめです。
1-4.購入済みのものを補完する商品やサービスの紹介
商品の購入までにアップセルを実現できなかったユーザーに対しても、アップセルを検討してもらうことは可能です。
例えば、家電などの購入時に延長保証のオプションをつけなかったユーザーに対し、商品発送までにオプションを変更できるようにしておくといった方法です。
購入後のメールで、
- 延長保証をつけなかった場合のリスク
- 後からはつけられない
- 注文時につけ忘れていないか
といったことをユーザーに問いかけることで「やっぱりオプションをつけよう」と考え直す時間を設けましょう。
この方法はMixbookというアメリカのフォトブック制作サービスで実施されており、出荷前にオプション追加やカスタマイズができる時間が設けられています。
1-5.希少性や限定性を感じさせる
普通に商品が売られているよりも、「限定〇個」「〇時までタイムセール」とされている商品が魅力的に見える人は多いでしょう。これは、心理学で「希少性の原理」と呼ばれています。数量の希少性や時間の限定性があるものに対して、人は魅力を感じやすいのです。
希少性の原理は、アップセル施策でも活用できます。
商品を購入しようとしているユーザーに対し、上位商品が「限定〇個」「24時間だけのタイムセール」として表示された場合、普通にオファーするよりも購入してもらえる確率を上げることができるでしょう。
1-6.一定額以上を送料無料にする
多くのユーザーは「送料」を支払いたくないと考えているため、一定額以上を送料無料にすることもアップセルに繋がります。
例えば、4,500円の商品を購入しようとしていた場合、5,000円以上の商品なら送料が無料でより良い商品を購入できるのであれば、多くの人が後者を選ぶのではないでしょうか。
ユーザーが商品をカートに入れた段階で「あと〇円で送料無料」と表示することで、上位商品への変更やオプションの追加をする可能性が高まります。
また、単品の購入では送料がかかるけれど、2個以上セットで購入すると送料が無料になるように設定するのも効果的でしょう。
1-7.プラン内容など金額差の理由を明確にする
ツールやサービスでいくつかのプランがある場合、プランごとにどのような違いがあるのかを一目でわかるようにしましょう。金額だけ選ぼうとするユーザーに対し、上位プランではどのようなことができるのかを理解してもらうためです。
上図のように、プランごとの詳細を簡単に比較できるようにしましょう。そうすることで、ユーザーは上位プランにした場合にどのような価値が得られるのかすぐに判断できます。
マーケティングなどのツールを扱うsalesforceでは、ツールの機能が多すぎるため比較表をプラン一覧の下からすぐにダウンロードできるようになっています。ダウンロードのひと手間はありますが、非常に見やすい価格表で比較が可能です。
アップセルを提案するためには、ユーザーが比較検討しやすくすることも大切です。上位プランの人気が高ければ、「もっとも利用されています」とプラン名の箇所に表示するのもおすすめです。
1-8.元の商品・サービスとの価格差を大きくしない
アップセルを提案する場合、元の商品やサービスの価格からの価格差が大きすぎると失敗する可能性が高くなります。
例えば、1本5,000円のネクタイを購入しようとしている人に対して30,000円の高級ネクタイをすすめても、想定している予算を超えすぎてしまえば購入してもらえなくなるからです。
価格の上限は、購入しようとしていた商品やサービスから25%アップまでを上限とすることをおすすめします。
1-9.「3つの選択肢」を活用する
人は3つのグレードを提示されると、真ん中のグレードを選ぶ傾向にあります。これを心理学では「極端性の回避」といいます。そのため、アップセルをする際にも3つの商品を提示することで、真ん中のグレードを選びやすくなるのです。
また、人は選択肢が多すぎると何が最適かを判断しにくくなる傾向があります。これを「選択回避の法則」といいます。3つというある程度絞られた数字は、ユーザーが選択しやすい数字でもあるということです。
アップセルを表示させる際には、3つの選択肢を意識して提案することをおすすめします。
2.商品で変わるアップセル提案の3つのタイミング
アップセルを提案するタイミングには、以下の3つがあります。
- トライアル期間の終了前後
- 購入前
- 購入後
商品やサービスによってアップセルを提案するタイミングは異なりますので、商品ごとにどのタイミングで提案を行うのかについて見てみましょう。
3-1.トライアル期間の終了前後
ツールやサービスのトライアルから、有料会員への引き上げを行いたい場合は、トライアル期間の終了前後にアップセルの提案を行います。
期間終了前から「有料会員になるとどのようなメリットがあるのか」をユーザーに訴求しましょう。
トライアルが終了しても有料会員に引き上げられなかった場合、期間限定で会員費が割引になるオファーを提示してみるのもひとつの手です。そうすることで、金額がネックになっているユーザーを引き上げられる可能性があります。
3-2.購入前
物品販売の場合は、購入前がアップセルのタイミングです。いくらメリットがあっても、商品の購入後すぐに上位商品を購入してもらうことは難しいからです。
商品ページや決済ページなどにアップセルを提案するレコメンドを表示させ、購入している商品よりも上位商品の方がメリットが多いことを訴求しましょう。
3-3.購入後
定期商品のお試しの場合、お試しセットの購入や無料お試し申し込み後にアップセルを提案します。
購入後のアップセルは基本的にメール・DM・LINEなどで実施します。
メールなどでのアップセルは、商品の使い方やお客様の声などを配信することができるため、メリットの訴求がしやすいという特徴があります。
一定期間継続してメール配信などを行っても引き上げができない場合、「2週間限定」などの特別オファーを提示してみましょう。
3.どのような手法でアップセルするかを決める2つのステップ
アップセルは、むやみに上位商品を提案すればいいというものではありません。提案されたユーザーが商品に魅力を感じ、購入したいと思ってもらう必要があるからです。
適切なタイミングでアップセルを提案するには、以下のステップでアップセル施策を進めましょう。
- アップセルを提案する方法の選定
- アップセルの実施
では、各ステップごとにやるべきことを詳しく解説します。
3-1.アップセルを提案する方法の選定
まず、どのようなアップセル施策が効果的かを、自社の扱う商品やサービスから考えてみましょう。先ほど解説したアップセルのタイミングも参考にしてください。
例えば、ファッションや雑貨などの物品を取り扱っている場合、購入前のアップセル提案になります。そのため、商品ページなどにおすすめとして上位商品を表示させるなどの施策が考えられるでしょう。
また、無料トライアルなどがないツールやサービスの場合は、プラン内容をすぐに比較できるようにすることで上位プランの契約に繋げられる可能性があります。
メールでの定期商品アップセルも、どのタイミングでメールを送信するか、オファーはいつから提示するかといったことを決めておきましょう。
3-2.アップセルの実施
どのようにアップセルを提案するかが決まったら、サイトに実装しましょう。
一ヶ月など一定の期間をあけて効果を測定し、効果的であると判断した場合はその方法を継続します。
もし、目標値に届いていない場合や想定していたよりも効果が得られない場合は、アップセルの提案方法を見直して、再度効果を測定してみましょう。
まとめ
アップセルの施策には、以下のような手法があります。
アップセルを実施する主なタイミングは、以下の3つです。
- トライアル期間の終了前後
- 購入前
- 購入後
どのようにアップセルをすれば、ユーザーが魅力を感じてくれるのかを考えて、施策を検討しましょう。
アップセル施策は一定期間で効果を測定し、目標を達成するまで改善と効果測定を繰り返しましょう。