「LTVを向上させるためには、なにをするべき?」
LTVは「顧客生涯単価」と訳し、1人の顧客が自社に生涯もたらす金銭的価値を評価した指標です。
昨今、新規顧客の獲得が難しくなっており、既存の顧客と長く取引をすることが重要になっていることから、その指標になるLTVが重要視されるようになりました。
LTVとひとことで言っても、計算方法は商品やサービスによって異なります。正しい方法で計算できていなければ、重要な要素が反映されていない数字になってしまいます。計算ごとに見るべき視点が異なるため、自社の商材に合う計算方法を選ばなくてはなりません。
LTVを向上させる施策には、主に以下のようなものがあります。
施策ごとに適した商材が異なるので、自社ではどの施策が有効かを把握して実行しましょう。
本記事では、以下の内容を詳しく解説しています。
- LTVの計算方法
- LTVを向上させる施策
- LTVの向上に役立つツール
この記事を読むことで、自社に合うLTVの計算方法や施策がわかります。また、LTVを効率的に向上させるためのツールも紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
1.商品・サービスによって異なる4種類のLTV計算方法
LTVの計算方法は、扱う商材やサービスによって異なります。
以下のように計算式を使い分けましょう。
LTVの種類 | 計算式 |
---|---|
リピート商材のLTV | 購入単価 × 購入回数 × 継続期間 |
サブスクリプションのLTV | 平均単価 × 粗利 ÷ 解約率 |
BtoB商材のLTV | 顧客1人あたりの年間取引額 × 収益率 × 顧客1人あたりの継続年数 |
顧客全体のLTV | (売上高 - 売上原価) ÷ 購入者数 |
では、計算式ごとの特徴について解説します。
1-1.リピート商材を対象としたLTV計算
リピート商材を取り扱っている場合は以下のようにLTVを計算します。
購入単価 × 購入回数 × 継続期間 |
例えば、3,000円の商品を年に2回購入し、3年継続した場合のLTVは18,000円と計算できます。
全体の平均値でLTVを計算するのが基本ですが、期間を分けて計算することで、好調な時期や不調な時期を把握することも可能です。
1-2.サブスクリプション型商材を対象としたLTV計算
サブスクリプション型商材を取り扱っている場合は以下のようにLTVを計算します。
平均単価 × 粗利 ÷ 解約率 |
月額や年額で一定の料金が発生するサブスクリプションサービスは、長く継続してもらうほどLTVが向上します。そのため、LTVの計算にも重要な要素である解約率が含まれるのが特徴です。
解約率の計算は、「月間の解約数 ÷ 月間の顧客全体数」で算出しましょう。
サブスクリプションサービスの解約率は月間3~10%が許容範囲(※ 参考)と言われているため、それを超えるようであれば早急に改善が必要です。
1-3.BtoB商材を対象としたLTV計算
BtoB商材を取り扱っている場合は以下のようにLTVを計算します。
顧客1人あたりの年間取引額 × 収益率 × 顧客1人あたりの継続年数 |
BtoB商材の場合は顧客との取引額が大きくなるケースが多く、受注額が大きい=利益率の良い取引とは限らないため、このような計算式を用います。
例えば、以下のような2種類の商材があったとします。
- 年間120万円で収益率50%の商材
- 年間100万円で収益率70%の商材
1年のみの継続であればLTVは前者の方が高くなりますが、2年継続した場合は後者のLTVが20万円高くなります。
つまり、受注額は低いけれど自社により利益をもたらしてくれるのは後者であるということです。
1-4.顧客全体を対象としたLTV計算
顧客全体を対象にする場合は以下のようにLTVを計算します。
(売上高 - 売上原価) ÷ 購入者数 |
顧客全体で、どれだけの利益が得られているのかを大まかに把握する場合に用いる計算方法です。マーケティング費用や顧客維持コストなど、全体的な予算を見る際などに活用できます。
2.LTVを向上させる9つの方法
LTVを向上させるためには、以下のような方法があります。
これらの施策ごとの特徴を理解して、自社に適した方法を選びましょう。
3.【施策1】レコメンドを強化して顧客単価を上げる
レコメンドとはユーザーに商品を提案することです。
レコメンドを強化することで、適切なタイミングで顧客の目に留まる商品を提案できれば、顧客単価・顧客満足度の向上、ひいては継続率のアップが期待できるでしょう。
レコメンドは手法によってアップセルとクロスセルに分けることができます。
アップセル | ユーザーに上位の商品を提案する施策 |
クロスセル | 関連商品や同じ商品のまとめ買いなどを提案する施策 |
ひとつずつ解説していきます。
3-1.アップセル施策を実施する
アップセルはユーザーに上位の商品を提案する施策です。
主に以下のような施策があります。
アップセルはリピート商材・定期購入・サブスクリプションなど、商材によって実施すべき施策が異なります。施策ごとの提案方法やタイミングなどを理解し、適切な施策を選びましょう。
アップセル施策の詳しい実施方法については以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
参考記事:WEBマーケティングの収益率を上げるためのアップセル施策9選
3-2.クロスセル施策を実施する
クロスセルは関連商品や同じ商品のまとめ買いなどを提案する施策です。
主に以下のような施策があります。
クロスセルにはこのようにさまざまな施策がありますが、施策ごとにレコメンドを表示させるタイミングやおすすめする商品が異なります。
また、レコメンドのタイミングによってどのような違いがあるかも理解しておく必要があります。具体的にはユーザーの購買段階によって、下記のような違いがあります。
購入前 | 幅広く提案できるが購買行動を邪魔しないように気を付ける必要がある |
購入後 | 購買行動の邪魔にならないタイミングだが提案できる商品が限られる |
クロスセル施策を実施する際は、ユーザーがなにを求めているかを把握し、適切なタイミングで適切な商品を提案しましょう。
クロスセル施策の詳しい実施方法については以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
参考記事:WEBマーケティングの収益率を上げるためのクロスセル施策11選
4.【施策2】アプローチをかけて購入頻度を上げる
レコメンドでも触れましたが、適切なタイミングでのアプローチは購入頻度の向上に欠かせません。
顧客はこちらが考えている以上に、サイト・商品・サービスのことを忘れてしまうため、継続してもらいたいならアプローチは不可欠なのです。
具体的には、定期商品を扱う企業の中には、お試し商品が届いたころに併せてメールを配信し、「開封していただけましたか?」と確認を行う企業もあります。
なぜなら、届いた商品を開封せずに放置する顧客も一定数いるからです。放置されたままでは商品を使ってもらえず、忘れられてしまう可能性があります。
そのため、LTVを高めるためにはアプローチして自社を思い出してもらったり、商品について知ってもらう働きかけが必要です。
アプローチ方法はメール・電話・DM・SNSなどさまざまな方法がありますが、顧客の年齢層などに合わせて選ぶことが重要です。
若年層であればメールやSNSが有効ですが、高齢者がターゲットの場合はスマホや携帯電話を使いこなせていない可能性があり、電話やDMの方が効果的な場合があります。
また、以下のような顧客の段階に分けて配信する内容を変えましょう。
無料お試し段階の顧客 | 商品やサービスの使い方や良さを伝え、リピートや定期購入に繋げる |
定期購入中の顧客 | 解約にならないように、より商品を効果的に使用する方法などを伝える |
1度購入したことがある顧客 | 期間限定のセール情報を紹介する |
リピーターの顧客 | パーソナライズされたおすすめ商品やセール情報を紹介する |
購入頻度が高い顧客 | 優良顧客限定のオファーを紹介する |
上記のような顧客の段階に合わせて、配信内容を変更したアプローチ例を下記に記載します。
上記はあくまでも一例であるため、自社の顧客にはどのようにアプローチするのが効果的なのかを検討し、実施・検証・改善を繰り返しましょう。
CRMツールなどを活用すれば、「購入から1週間たった顧客」といったように顧客の条件別に自動でメールを配信することができます。
CRMツールの機能などについては、「12-1.CRMツール」で詳しく解説しています。
5.【施策3】会員ランク制度やポイント制度を導入する
顧客にとって、会員ランクやポイント制度もリピートのきっかけになります。
例えば、ポイントをためて支払いに使用できればお得感が増すため、同じところで買い物をしてポイントを貯めたいと感じる顧客もいるでしょう。
また、年間の購入額や購入頻度で会員ランクをつけることで、会員限定オファーを実施することができます。
会員ランクがつくことで、顧客側に「特別な顧客」であることを示すことができ、ロイヤル顧客の育成にも役立つでしょう。
そうすることで、購入頻度や継続率の向上が期待できます。
6.【施策4】リピーターへの特別感を演出する
会員ランクやポイント制度の導入が難しいという企業もあるでしょう。そのような場合でも、リピーターに継続してもらうために、特別感を演出することは可能です。
特別感を演出すると、顧客は「サイトを利用していることを企業側が把握してくれている」「特別な顧客として扱われている」と感じます。
例えば、「いつもご利用いただいている〇〇様限定オファー」といったように、リピーター個人に向けたメールを配信するなどです。顧客の名前を入れることで、個人に特別なオファーをしていることを演出することができます。
上記のように、顧客が「自分だけを特別扱いしてくれた」などと演出をすることで、顧客満足度の向上が期待でき、自社サイトに愛着を持ってもらうことができるでしょう。
顧客が閲覧していたけれど購入しなかった商品やお気に入り登録している商品などの割引を提示すれば、より効果的でしょう。
7.【施策5】解約率を減らす
定期商品やサブスクリプションサービスの場合、解約率を減らす施策が重要です。
定期商品などはセールなどを実施することができません。そのため、解約率を減らすために定期的にメールやSNSで情報を発信し、サービスを継続するメリットを伝えましょう。
そうすることで、自社の商品をより好きになってもらい、ファンになってもらうことが大切です。
定期商品のメール配信なら以下のような内容が効果的でしょう。
商品やサービスをより効果的に使う方法 | 商品やサービスを「便利」「あった方がいい」と感じてもらう |
継続しているお客様の声 | 効果がまだ出ていないくても、効果が出ているお客様の声で継続してみようと感じさせる |
商品の開発秘話 | 商品の特別感を演出する |
例えば、毎週花が届くサブスクリプションサービスなら、
- 花のきれいな飾り方
- 花を飾ったお客様の部屋を紹介
- ドライフラワー・ハーバリウムの作り方
- 切り花を長持ちさせる方法
などを紹介するといった内容などが考えられます。
8.【施策6】カスタマーサービスを充実させる
顧客の問い合わせやクレームに対して即座にレスポンスすることも重要ですが、問い合わせ方法を充実させることも大切です。
いくら質の高い商品やサービスを提供していても、カスタマーサービスのレベルが低ければ顧客は継続をやめてしまう可能性があります。
例えば、届いた商品に不具合があり、メールで問い合わせをしたとします。その返信が来るまでに1週間もかかったら「対応が酷い」と感じる顧客は多いでしょう。また、購入したい商品に関して知りたいことを問い合わせた際に、返信に何日もかかればその間に購買意欲は減少してしまうはずです。
サイトにライブチャットやチャットボットを設置したり、LINEからの問い合わせを可能にしたり、電話やメールに加えて手軽に問い合わせられる環境を整えるといいでしょう。
顧客からの問い合わせ内容がクレームの場合は、24時間以内に対応できるようにしましょう。素早く丁寧に対応することで、顧客満足度の低下を防ぐことができるでしょう。
9.【施策7】顧客の意見を収集する
商品やサービスをより良いものにし、顧客に長く利用してもらいたいのであれば、顧客の意見を収集して一元化しましょう。
LTVを向上させるには、顧客に長く継続してもらうことが重要です。そのためには顧客満足度を高める必要があり、顧客の声を聞いて施策に取り入れることが大切だからです。
顧客の声を収集することで、商材やサイトの問題点がわかるだけでなく、顧客が何を求めているのかを把握することにも役立ちます。
顧客の声を集める際は、
- 問い合わせ
- クレーム
- 解約理由
- 顧客アンケート
上記のような方法で、できる限り集めてください。
カスタマーサポートへの問い合わせなどを収集する場合は、CRMツールを活用することでデータを蓄積することが可能です。
10.【施策8】ターゲットを絞ったメール配信を実施する
購買に至っていない顧客とリピーター・優良顧客はそれぞれに合わせた内容のメールを配信すべきです。
メール配信を行う場合は、すべての顧客に同じ内容を一斉配信をするのはあまり効率的ではありません。なぜなら、顧客はセグメントごとに求めているものが異なるからです。
例えば、会員登録はしているけれど購買していない顧客には初回限定クーポンを配布するなど、まず1度利用してもらうことが大切です。定期購入のお試し段階の場合も、「このメールから定期購入を申し込むと20%オフ」など、定期購入を申し込みたくなるようなオファーにする必要があります。
前述した通り、リピーターや優良顧客へのアプローチは購買履歴や閲覧履歴などを基にパーソナライズされたオファーを配信するといいでしょう。
11.【施策9】サブスクリプションを開始する
前述した通り、サブスクリプションは月額・年額で決まった金額を支払います。解約されない限り料金の支払いが発生するため、LTVを向上させやすいビジネスモデルと言えるでしょう。
自社が扱う商品やサービスがサブスクリプションに向かないと思わず、どんな形ならサブスクリプション化して利益を得られるかを検討してみましょう。
最近ではさまざまなサブスクリプションがあります。例えば、よく見られるのは以下のようなサービスです。
- お花や観葉植物が毎月届く
- コーヒーやお茶が毎月届く
- 洋服を毎月決まった数をレンタルできる
- 自分に合わせたサプリメントが毎月届く
- 動画見放題・音楽聴き放題になる
- デジタル書籍読み放題になる
他にも、毎月宝石が届くサービスや、全国にある物件に好きなだけ泊まることができるサービスなど、さまざまです。
もし自社の商品やサービスと関連したサブスクリプションがある場合は、価格帯やサービス内容など競合調査を行いましょう。
12.LTVの向上に役立つ3つのツール
LTVを向上させるためには、データ収集・分析・顧客とのコミュニケーションなどが欠かせません。また、施策によってはサイトに新たな機能を追加する必要があります。
特におすすめのツールは以下の3つです。
- CRMツール
- Web接客ツール
- WordPressのECサイトで活用できるプラグイン
では、これらのツールの特徴について詳しく解説していきます。
12-1.CRMツール
CRMツールは、顧客情報を管理して顧客と良好な関係を築くことを目的とした機能を搭載しているツールです。導入することで、顧客のデータ以外にも問い合わせ履歴などさまざまな情報が一元化できます。
CRMツールを活用することで、精度の高い分析ができるようになり、事前に決めたシナリオ通りにメールを自動配信できるようになるため、効果的・効率的にLTVを改善できるようになります。
主な機能は以下の通りです。
機能 | 特徴 |
---|---|
顧客管理 |
|
マーケティング支援 |
|
顧客分析 |
|
問い合わせ管理 |
|
メール配信 |
|
フォーム作成 |
|
このようにさまざまな機能があるので、自社に必要な機能は何かを明確にし、CRMツールを選びましょう。
12-2.Web接客ツール
Web接客ツールは、店舗でスタッフが接客するようにサイトを訪問したユーザーに声をかけ、疑問を解消したり購買を後押ししたりするツールです。
即座に顧客の疑問に対応できるため、購買を促進することができ、顧客満足度の向上にも貢献します。
Web接客ツールには、主に以下の3タイプがあります。
種類 | 特徴 |
---|---|
シナリオ型 |
|
AI型 |
|
ポップアップ型 |
|
どの機能を導入したいかで選ぶツールが異なるので、必要な機能を明確にしてからツールを選定してください。
12-3.WordPressのECサイトで活用できるプラグイン
WordPressでECサイトを運営している場合は、プラグインで機能を追加することができます。
まとめ
LTVの計算方法は、扱う商材やサービスによって異なるため、次のように計算式を使い分けましょう。
- リピート商材のLTV:購入単価 × 購入回数 × 継続期間
- サブスクリプションのLTV:平均単価 × 粗利 ÷ 解約率
- BtoB商材のLTV:顧客1人あたりの年間取引額 × 収益率 × 顧客1人あたりの継続年数
- 顧客全体のLTV:(売上高 - 売上原価) ÷ 購入者数
LTVを向上させる施策には、主に以下のようなものがあります。
施策ごとに適した商材が異なるので、自社ではどの施策が有効かを確認してください。
LTVを向上させるためには、ツールを活用するのがおすすめです。
- CRMツール
- Web接客ツール
- WordPressのECサイト用プラグイン
これらのツールを活用することで、データ収集や分析がしやすくなり、新たな機能も簡単に追加できます。
自社に合う計算方法で計測しながら、自社に合った施策を実行してLTVを向上させましょう。